「日本文化そもそも」とは、
日本文化の根本を知り
「そもそもこういうことだったのか!」ということに気づき
暮らしに息づかせるために
今の世の中から忘れられていることを取り戻し
本当の意味で、心豊かに暮らすためのヒントを見つける講座です。

※「サラダ隊」とは「こころ塾」の「和文化サラダ」開催時に結成された
ボランティアレポーターチームの名前です。
それぞれの感性で書かれたレポートをお楽しみください。

平成21年6月〜1月 講座内容と各先生のプロフィールはこちら。
読売新聞ホームページでも掲載されました。


日本文化そもそも  平成21年9月6日(日)


  その1
〜日本人の住まい〜


講師: 杉本節子氏

(財団法人奈良屋記念杉本家保存会事務局長
・料理研究家)


場所:こどもみらい館
 
レポート:サラダ隊 金時にんじん  写真:吉田明彦

主催:和の学校  共催:京都府


京都府のホームページ内の

「京都eラーニング塾」で

動画配信しています。


京都eラーニング塾

http://info.pref.kyoto.lg.jp/el/

平成19年7月5日に開かれた
「和文化サラダ」では、
「暮らす〜祭から学ぶこと〜」
というテーマで
祇園祭を中心にお話いただいた
講師の杉本節子さん。

今回の「日本文化そもそも」は、
京都の町家「杉本家」の歴史を通して
日本人の「住まう」ことを考える
講座となりました。

会場は京都市中京区にある
「こどもみらい館」


京都市生まれ
財団法人奈良屋記念杉本家
保存会事務局長
料理研究家

杉本節子先生 主要論著
『京町家の四季』
『京町家のしきたり』
『京都のおばんざい12ケ月』
『京町家・杉本家の献立帖』など

杉本家住宅保存会公式HP
http://www.sugimotoke.or.jp/


第1部 講演
杉本節子さん
―町屋から見た「住まう」こと―

【杉本家の歴史と特徴】
呉服商「奈良屋」として
創業された杉本家の様子。
天保時代に書かれた
暮らしの忘備録ともいえる
『歳中覚(さいちゅうおぼえ)』には、
年中行事の献立やしつらい、
家のならわしなどが
事細かに記録されていることを
説明いただきました。

1743年(寛保3)呉服商「奈良屋」として
創業された杉本家が
今の場所に住居を構えたのは
1870年(明治3)のことです。

京町家はそれぞれの家の地域性、
宗教などによって「個」の特徴づけがされます。

杉本家の場合、
京呉服を仕入れて関東地方で販売する
他国店持(たこくだなもち)の
京商人の家として栄えたこと、
西本願寺浄土真宗の門徒であったこと、
八坂神社の氏子として祇園祭では
伯牙山の家持衆の中心であったこと、
主にこの3つの背景により住まい方の
特徴が形作られてきました。

西本願寺への信仰心の篤さを示すものとして
仏間の横手にある仏庭には、
西本願寺北能舞台の白洲にあるのと
同じ石をしきつめています。

また幕末の蛤御門の変をきっかけとした
元治の大火による失火の反省から、
万が一の際に仏壇や欄間を
避難させるための地下室を備えています。

切石を積み上げたこの地下室は、
現存する町家の中で唯一の例であり、
講師の杉本節子さんご自身も子供の頃は
存在を知らされていなかったそうです。

天保時代に書かれた
暮らしの忘備録ともいえる
『歳中覚(さいちゅうおぼえ)』には、
年中行事の献立やしつらい、
家のならわしなどが事細かに記録されています。


【町家の構造と暮らし】

町家の住まい方には多くの工夫があります。

季節ごとに建具や部屋の飾りを変えるほか、
同じ部屋でも客人を迎えたり祭などの日には
欄間や座敷の床の間のかまちの覆いを外して
「ハレ」の空間を演出します。

日常生活においても使用人と主人は
食事をする場所が違ったり、
台所と客間として使う座敷では
天井の造りが違うなど
厳格な上下関係によって空間が仕切られています。

表の世界と中の世界との結界である
格子や御簾は、
現代のシャッターのように完全に内と外とを遮断せず、
建具を隔てていても
人の気配を感じさせる造りになっているのが特徴です。

細目(ささめ)格子

 格子の幅は外側が広く、内側が狭くなっています。
そのため表から中の様子はわかりませんが、
中から見るとこのように光がさしこみ、
外のことがよくわかるような造りになっています。
切子(きりこ)格子

 採光のために立子の上部が切り取られています。

呉服商であった杉本家は2本切子。

糸や紐を扱う商家は3本切子、
織屋は4本切子など
職種に応じて切子の数が決まっています。
虫籠(むしこ)窓

格子を漆喰で塗り固めた町家特有の
窓です。
犬矢来(いぬやらい)

軒下に置かれる犬矢来は
その名の通り
犬や泥などから建物を守るほか、
家の中の商談を聞かれないように
通行人を遠ざける役目もありました。
嫁隠し

 家の中の世界である台所と
外の世界を仕切る板。

家に出入りする酒屋さんや八百屋さんは
この板の前で家の中に声をかけます。

ちなみにこの台所(通称:おだいどこ)は杉本家が
京都市の指定有形文化財になってからも
一番最後まで一般公開されなかった場所だそうです。

【季節にあわせたしつらい】

7/14〜7/16の祇園祭の時には前後を含めて約1週間、
通りに面した「店の間」が町内の山鉾である伯牙山の「お飾り場」として、
道行く人の目を楽しませてくれます。

普段の「店の間」。
祇園祭の頃になると「お飾り場」になります。
表玄関に張られた黒と白の「くじら幕」も
ハレの日用のしつらいです。
伯牙山のちまきも飾られます。
これが「伯牙山」です。

祭りの際にはお飾り場として町内に開かれる店の間ですが、
それ以外の部屋でも建具や屏風の置き方によって
部屋の使い方や人間関係を調節します。

同じ屏風でも裏、表、折り方、置き方で
何通りもの部屋の雰囲気を作ることが出来ます。


屏風の紙蝶番のしくみ。
この紙蝶番だと、片一方だけでなく
表へも裏へも折れます。
同じ屏風でも
裏、表、折り方、置き方で
何通りもの部屋の雰囲気を
作ることが出来ます。
ついたての前に花を置くだけで
部屋の雰囲気が変わります。

第2部 体験
―和室の立ち居振るまいを知ろう!―


第2部では、和室での立ち居ふるまいを
実際の座布団を使って体験しました。

明治40年生まれの祖母に座布団の並べ方を
厳しくしつけられという杉本節子さん。

どんなに高級な座布団でも、
置き方が整っていないだけで、
雑多な印象になるし、
逆に高価なものでなくても
きちんとそろえて出すことで
お客様へのおもてなしの気持ちを
示すことができます。

節子さんが子供だったころ、
杉本家の座敷は子供が入れない部屋でした。

座敷への出入りが許されるようになるのが
大人として扱われるときであったようです。


置き方:
角はそろえ、
ふさを前に向けてそろえます。

座布団は長方形の布を二つ折りにして
縫い合わせてあります。

縫い目が覆いかぶさる方が表側。

縫い目のない布が
輪っか状になっている部分が
お客様の膝頭にくるように並べます。

足を組んだり、
くずす時には横長の形の方が
落ち着くような気がしますが、
本来は正座にあわせた
縦長の形に置くのが正しい形。

入り方・降り方:
座布団には足の裏が直接触れないようにします。

入る時は後ろで一旦正座をしてから片膝を立てて入り、にじるように上がります。
降りる時も座布団の上で一旦膝をつき、横ににじり降ります。

みんなでやってみました!
なんとなくサマになったような気がします。


第3部
ほっこりタイム
いつものように、ほっこりタイムは
講師の先生と参加者の楽しいやりとりの時間です。


今回のお菓子は
二篠若狭屋
さんの
「家喜芋(やきいも)」です。

杉本節子さんのおススメ。

つくね芋で作られたモチモチとした皮で
餡を包んでいます。



今回の ほっこりタイムで
節子さんにご紹介いただいた本『江戸の女性』の中には、
「丸い形のお菓子を食べる際は、かじった後の三日月型の歯型を見せるのは良くない。」
など細かい作法が書かれていました。

手に持っておられるのが
『江戸の女性』という本。
この本に書かれていることで
話題が広がりました。


Q.格子や庭が特徴的な町家ですが、台風や雨の時はどうされているのですか?
A.基本的には雨戸を閉めるだけです。特別なことはしていません
Q.これだけの広い住居ですが、掃除はどのようにされているのですか?
A. 年に2回ほど、職人さんに入ってもらうことはありますが、日常の掃除は家族で行います。

格子の切子のところが、ちょうど雑巾があたる形に減っていたりするのを見ると、
呉服商であった頃から長年にわたり、幾人もの人間によって大切に手入れされてきた家の歴史を感じます。

※最近では、黄砂や花粉など埃の種類も変わってきたそうです。


参加者からも様々に質問が出ました。
「家喜芋」を美味しくいただきました。
リラックスした雰囲気の中、節子さんも
やわらかい京ことばで楽しく質問に答えてくださいました。

サラダ隊 金時にんじん の 思ったこと
京ことばには「はんなり」という形容詞があります。

「花なり」を語源とし、
華やかでありながら上品で落ち着いた
明るさをもっている様子を表す言葉です。

杉本節子さんを見ていると自然とこの言葉が浮びます。

今回の講座の前に、
私はたまたま
節子さんが出演されている
NHK「きょうの料理」のテレビ放映を
見る機会があったのですが、
そのときの献立は、
伝統的な京のおばんざい
「なすの泥亀(どんがめ)煮)」の他、
なすやパプリカなどの夏野菜を
トマトと一緒に煮込んだ「ラタトゥイユ」でした。

パプリカやラタトゥイユといったカタカナが
食卓に並ぶようになったのは、
ごく最近のことだと思います。

節子さんのお話を聞いていると、
町家の歴史と伝統を守ることと
現代に生きる快適さの恩恵を受けることとは
反発しあうものではなく、
融合できるものなのだ、
ということに気付きます。

昔からのしきたりにのっとる。
ということは慣れない人にとっては
どこか堅苦しい印象を受けるかもしれません。

私たちの普段の生活において、
ルールや伝統を守ることが「今」を抑圧し束縛されているように
感じられてしまう場面も時にはあると思います。

しかし
実際の杉本家や節子さんから受ける印象は、
けして緊張感にあふれたものではなく、
どこか人をほっこりとさせるとてもやわらかい空気でした。

家を文化財として守っていくということは、
先祖の汗水を流して得た物を大切に慈しむことであり、
庭の草花の四季折々の風情を
楽しむ「こころ」を伝えて繋いでいくということなのだと思います。


きれいに掃除された旅館や
寺社の庭などにやすらいだ気持ちになるのは、
そこに人の「こころ」のぬくもりを感じるからではないでしょうか。

今の時代は手に入るモノの種類も量も増え、
毎日が「ハレ」の日のお祭りのように騒がしくなっています。

そういった時代の中で
人の生活の原点である「住まう」ことを考えることは、
自分や他人のこころを
今一度見つめなおすことになるのではないでしょうか。

流行りの言葉である
「エコ」も「スローライフ」も新しい概念ではなく、
実は昔ながらの日本の暮らしの中に息づいてきたものです。

便利で効率的な「今」とうまく共存するために、
「昔」や「伝統」を見直すことが心地よく住まうための
こころの在り方のヒントになっているような気がします。


当日のアンケートから
実家が京都の神社でそこで生まれ育ったのですが、
東男の主人と結婚し、仕事の都合で北海道へ。

全く、まるで別の国に行ってしまったようです。

二つの国のよい所、ステキな所をもっと深く知り、
息子に伝えていきたく、今回参りました。

先週、祖母も亡くなり昔の話をきく機会がなくなり・・・
人は機会を失うと思いが強くなるのか
今もとても京都の慣習について勉強したい気持ちです。

とても楽しく過ごせました。ありがとうございました。

私の娘達は祖父母と同居していますので 色々おそわる事も多いですが、
私自身は知らない事も多く勉強になりました。

娘世代にも核家族が多く、学校等でおそわる機会があればいいですね。
和にふれることの少ない今日この頃、町家のつくり、しきたりなど
お話をきかせていただき とてもいい時間でした。

杉本先生は新聞、書籍で拝見していましたが、とてもおきれいでした。

お話もよくわかりました。

先日、卒業した短大の用紙載っていらっしゃり 
後輩でいらっしゃることがわかり嬉しく思いました。

また 和の学校に参加させていただきたいと思います。
今日は大変楽しい時間を過ごさせて頂きました。ありがとうございました。

知らない事がいっぱいあり、1つでも覚えて帰れて嬉しいです。
杉本節子さんの家を愛している気持ちが伝わってきて嬉しかったです。

細目格子の話、おもしろかったです。

お菓子もおいしかったです。御馳走様です。

開催会場そのものに歴史を感じられることが望ましい。

和の心を。
貴重なお話を聞かせて頂きましてありがとうございました。

座ぶとんのお作法もなかなかない体験させて頂きうれしく思いました。

杉本先生の料理についての講座のお話も次回あればぜひお聞きしたく存じます。
本日も色々なお世話になり有難うございました。
目からうろこの座ぶとんの大切さを感じました。
日本人の美意識のせん細さを感じました。
「めいはりをつける」という大切さを改めて実感できました。

ありがとうございました。
これまで町家の話を聞いたことはあったが、
人間関係や行事などと関連しての話は初めてで、
プロジェクターを使った写真と図なども組み合わせており、大変によかった。

座布団の実技も初めて。
次回は杉本先生の食のお話をお聞きしたいです。

今日はありがとうございました。


スタッフ後記
保育コーナーの様子。
元気な子供たちに
スタッフもニコニコ顔になりました。
受付では和の学校の看板娘たちが
笑顔で参加者をお迎えです。
今回のこころ塾は、
小さなお子さんがいらっしゃる方にも
気軽に参加していただけるよう、
講座中に保育コーナーがあるのが特徴です。

この日の講座には
赤ちゃんを含め家族でボランティアとして
参加・協力したスタッフもいました。

職業も年齢も性別も様々な
ボランティアスタッフ同士は、
いわば和の学校
という「長屋」にたまたま集合した
住人のようなものです。

毎回同じ顔ぶれになることは
ほとんどないのですが、
イベントの度にそれぞれの近況を報告しあい、
今回のように子供たちの成長を
見届けることが出来るのも
また楽しみの一つです。

杉本家では
祇園祭の準備期間中は
町内が総出で集まり、
ちまきの飾りつけや鉾たてを行うそうです。

毎年繰返される賑やかな
その光景は地域の絆を深める
大切な年中行事の一つになっていると思います。

幅広い年齢層が集まって
一つのことを行うイベントという機会が
少なくなりつつある昨今、
年齢や住所や性別や職業、
いろんな肩書きを越えた集まりで
毎回お祭りの準備をする「和の学校」も、
町家に劣らない貴重な「長屋」です。

皆様もどうぞお気軽にお立ち寄り下さい。

次回からは、また初めての会場
「大徳寺保育園」での開催になります。

「衣その2」自然の色を染める
 〜日本の色を知る〜

お楽しみに。

今回の講師、杉本節子さんが講師をつとめた和文化サラダ
「暮らす 〜祭から学ぶこと〜」のレポートはこちら
http://www.wanogakkou.com/kokoro/kokoro_sarada009.html

杉本家住宅の維持・保存に協力される方は、「奈良屋杉本家保存会」にご入会ください。
http://www.sugimotoke.or.jp/

節子さんと妹の歌子さんによる公式ブログ「ならや日記」
http://www.sugimotoke.or.jp/naraya/

料理研究家として活躍される節子さんの「だいどこ日記」
http://www.kyoto-obanzai.jp/blog/


まだ暑い9月の初旬。
参加される方が道に迷わないように
地下鉄の駅から会場まで、スタッフは長い時間、
案内のために道に立ち続けました。
お疲れ様でした!

 


日本文化そもそも レポート

和文化サラダ レポート

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