「日本文化そもそも」とは、
日本文化の根本を知り
「そもそもこういうことだったのか!」ということに気づき
暮らしに息づかせるために
今の世の中から忘れられていることを取り戻し
本当の意味で、心豊かに暮らすためのヒントを見つける講座です。

※「サラダ隊」とは「こころ塾」の「和文化サラダ」開催時に結成された
ボランティアレポーターチームの名前です。
それぞれの感性で書かれたレポートをお楽しみください。

読売新聞ホームページでも掲載されました。


日本文化そもそも  平成20年7月13日(日)


  盂蘭盆会
〜お盆ってなあに?〜


講師: 梶田真章氏(法然院貫主)
 
レポート:サラダ隊 賀茂なす(目片雅絵)   写真:松尾宇人 吉田明彦


日本文化の根本を知り
「そもそもこういうことだったのか!」
ということに気づき、
暮らしに息づかせるための
ヒントを見つける講座「日本文化そもそも」。

第2弾は、法然院の梶田貫主による、
お盆についての講演です。

会場は自然に包まれた法然院。

本堂や方丈など場所を移しつつ、
楽しい講座が行われました。

第1部 やのん絵本ライブ
街中では考えられない
ひんやりとした空気が流れます。
池には天然記念物の
モリアオガエルのおたまじゃくしが
いっぱい泳いでいました。
オリジナルの「和の国 はじまりのものがたり」。

「日本文化そもそも」の幕開けは、
ユニット「やのん絵本ライブ」から。

歌と楽器を担当されるSEIYAさんと、
読み語りやコーラスの
Yuccoさんのご夫婦ユニットが、
優しい音楽を奏でながら、
絵本を読み語ります。

絵本ライブのスタートは
必ず『魔法のことば』
(金関寿夫:文、柚木沙弥郎:絵、福音館書店)
から。

青々とした美しい木々をバックに、
絵本が読み上げられます。

次は、楽器「カリンバ」の音に乗せた
『そらのいろみずいろ』
(下田昌克、小峰書店)。

生物が生きていくのに
必要不可欠な水をテーマに、
ダイナミックな絵と
少し哲学的な言葉で綴る絵本。
カリンバの不思議な音色が
印象的です。

続いては
「やのん絵本ライブ」の
代表作になりつつある、
和の学校・吉田さんとのコラボ絵本
『はじまりのものがたり』が。

石笛(いわぶえ)や
ギターの演奏にあわせて、
SEIYAさん文、
吉田さん絵の絵本を朗読されました。

さらに、
前回の特別講演でも登場した、
写真絵本『はるにれ』
(姉崎一馬:写真、福音館書店)、
オリジナル曲
『あなたへ 〜子どもたちの子どもたちへ贈る〜』
の熱唱でライブは終了しました。

会場は屋内ではありますが、
戸がすべて開け放たれた
半屋外ともいえる空間。

葉の間を風が抜ける音、
虫の声、
時折聞こえるししおどしの音、
自然や庭の音と
「やのん絵本ライブ」の
音楽や語りが
一体となったライブでした。


〜やのん絵本ライブ〜

'95年布絵巻神話「くにのはじまり」初演。
'99年、四国より関西に移転。
講談社全国おはなし隊大阪地区代表・絵本カーニバル2000のステージが評判を呼び本格的に絵本ライブをスタート。

以後、学校・図書館などの公共施設にとどまらず各地の地域イベントや音楽イベントにも多数出演

「絵本の語り越えた幻想的な世界」と人気を集めている。
SEIYA[セイヤ]は弾き語り・石笛でのソロライブも行う。
Yucco(ユッコ・語り)、Eika(エイカ・記録)のファミリーで活動。

http://blog.goo.ne.jp/seiya4u




第2部 講演 
梶田真章貫主
「盂蘭盆会(うらぼんえ)―お盆ってなあに?―」


本堂に移動して、梶田さんのお話が始まりました。

テーマは「お盆」について。


仏教の「お盆」と、
日本人の行っている「お盆」とは違います。

仏教の「お盆」は、「佛説盂蘭盆経」によるものです。

「目連説話」という、
お釈迦様の弟子の一人、
目連(目連尊者)のことを書いたお経があります。

目連が、亡くなった自分の母親のことを
神通力を使って見てみると、
母親は地獄の餓鬼道落ちて苦しんでいたのです。

目連がなんとか助けようと試みましたが、
助けることができず、
急いでお釈迦様に相談しました。

お釈迦様は、
母親を救うには
「安居(あんご:インドの修行期間))」の
終わりに当たる7月15日に、
お坊さんたちが集まるから、
その人たちにごちそうして、
もてなし、いっしょに祈ってもらいなさい」と教えました。

目連がそのとおりにすると、
母親は餓鬼道から救われたそうです。

お釈迦様はさらに
「同じように、7月15日にごちそうを用意し、
仏や僧や大勢の人たちに供養すれば、
多くのご先祖が苦しみから救われ、
今生きている人も
幸福を得ることができるでしょう」と説きました。


仏教の「お盆」は、
一切衆生(生きとし生けるもの、主に人間)の成仏を祈るもので、
「慈悲の実践」なのです。

対して日本人の「お盆」は、
民俗学者・柳田國男さんの名付けた「先祖教」における行事です。

先祖教のお盆は、
先祖の魂を迎えて供養し、また戻っていただくというもの。

仏教的に考えると、死者は西方浄土の極楽に行き、
菩薩になって悟りを開いています。

ですからお盆のたびに呼び戻し、子孫が供養するという考え方はありません。

お盆の送り火や精霊流し、墓参の際の水、
弔い上げ、お正月の門松やお年玉などの行事や慣習も、
先祖教の考え方に基づいているといえます。

わかりやすく
楽しくお話をしてくださる梶田さん。

先祖教の特徴には、以下のものがあります。

死者の霊がふるさと近くに留まっていること
この世とあの世の交流が自由であるということ
臨終の際の子孫のための願いが、
死後には必ず達成されると考えられたこと
死んでもなお、2度、3度と生まれ変わって、
しかも同じ事業を続けられると信じられたこと

『千の風になって』という歌が流行していますが、
これも先祖教的宗教観が流行させているといえます。

亡くなった人が光や風になって、
近くの山や海などから見守ってくれる。

極楽に行くのではなく、
現世に留まっているという考え方です。

仏教では死者は西方浄土にいて、
輪廻もあります。

ですから、お盆に呼び出して供養することはありません。

先祖がわたしたちの近くに留まっているからこそ、
お盆に先祖供養する必要が生まれるのです。

「お盆に墓参りをしても、誰もいない」と言います。

墓や寺社など固定的に場所を決め、
そこへ先祖供養に出かけること自体が
先祖教的な考えに基づいています。

仏教的には、
いつでも念仏を唱えることで
死者と交流できると考えますので、
墓参りも重要視されません。

先祖教では、
人が亡くなることを「永眠した」といい、
「天国に行ってほしい」と考えます。

一方、仏教では「他界した」といい、
「極楽(西方浄土)に行ってほしい」と思います。

日本人の先祖供養や宗教行事は、
仏教的なものと認識している人が多いかもしれませんが、
実は先祖教の行事なのです

阿弥陀仏の教えを
心から信じることができれば、
お盆行事は必要ありません。

阿弥陀仏の名前を唱えることで、
成仏できるのですから。
しかし、なかなか信じ切ることができない人も多いでしょう。

先祖供養やお盆行事をするのがいけない訳ではありません。

「お盆行事を行うことに意味はあるのか」と自問自答することが大切です。

その上で、意味があると思えば続ければいいですし、
ないと思えば別の方法を考えればいいのだと思います。

仏教にも、自分の力で悟りを目指すもの 、
阿弥陀様の力にすがって悟りを開かせてもらうものなど、
さまざまな種類があります。

ですから、宗教はまずは自分の器を見極めることから始まります。

自分自身の器や気性を理解した上で、
自分に一番合う、心が穏やかになる宗教や方法を取り入れるのがいいと思います。

「お盆」には、自分を見つめ直すのがいいのではないでしょうか。

悟りを開くためには、自己愛やこだわりを捨てることが大切です。

自分を見つめ直し、自己愛に走りすぎていないかなど、 自身をかえりみる機会にしていただきたいと思います。


第3部 ほっこりタイム

お話の後は、大書院に場所を移してのほっこりタイム。

法然院さんでお客様に出されているお菓子と、
法然院の善気水で水出しした麦茶ををいただきながら、
鋭い質問が飛び交いました。

Q. 仏教関連の本はいろいろあります。
自分の読んでいる本の内容が、正しいかどうか気になるのですが。
A. 内容の正しさについては、それぞれの考え方によります。

「念仏を申す」という点では同じでも、
その考え方は違いますから。

「自分は愚か者で、自分の力では悟れない」と、
知ることが大切です。

「自分の信じるものを決めて、それを信じること」
「自分の信じるものを人に押し付けないこと」
が大切だと、お釈迦様もそう仰っています。

人生の目標は穏やかに生きること。

生き方や考え方、宗教を人に押し付けてはいけません。
   
Q. 仏壇には「位牌」を置きますが。その意味は?
A. 仏教は「仏様を拝むもの」です。

位牌があると、阿弥陀様ではなく位牌を拝んでしまうので、
仏教的にはあまり意味がありません。

浄土真宗では作らない人もいますが、人情的にはあってもいいと思います。

人情に応えて位牌を作ったために、
仏教がわかりにくくなった側面はあります。

昔は、写真も骨もありませんでしたから、
位牌は今よりももっと意味がありました。

最近では、位牌の必要性も薄れてしますので、
必要ないと考える人は、作らなくてもいいのではないでしょうか。
   
Q. では「戒名」は、どんな意味ですか?
A. 戒名は、クリスチャンネームと同じで、
「仏の弟子になった」ときにいただく名前です。

ですから、亡くなってからつけるのではなく、
本来生前に貰うものなんです。

ですから、仏教を信仰する人なら生前にもらっておくのもいいと思います。
   
Q. 「和」の文化では、
どの分野も若者離れが進んでいるようです。

仏教界では、若者離れについてどのようにお考えですか?
A. ずっと、若い人や世間に向けての話をしたり、
活動を知らせたりするという努力をしていなかったことが、
今に繋がっています。

ですから、正しい話を広めつつ、
少しずつ関係を作っていくしかないのではないでしょうか。

寺やお坊さんも頑張る必要がありますが、
家庭でも子どもたちに教える必要があります。

もっと「人生はままならない、思い通りにならないこともある」と
教えてほしいと思います。

若い人の犯罪が増えているとか、
怖いことも多いといいますが、
それは日本の大人にも責任があります。

若い人や子どもに、
大人たちとともに生きていくための
常識や考え方をここ20〜30年の間、教えてこなかった。

そのツケが回ってきているのです。

少しずつでも若い人に話していくのが大切です。
Q. 日本は「大乗仏教」、
イランなどでは「小乗仏教」が盛んですが、
これは日本人に受け入れられやすいように、
形を変えてきたからでしょうか?
A. 「和の心」と「大乗仏教」は親和性があったのだと思います。

「みんなで救われよう」という考えですから。

民衆に入り込みやすいからという側面もあるのではないでしょうか。

同じ大乗仏教でも、宗派によって考え方は少しずつ違います。

自身が理解しやすい、納得できる宗派を選ぶのも大切です。

「念仏さえ唱えていれば、だれでも極楽に行ける」という考え方は
ラクではありますが、
いいことをした人も、犯罪を犯した人も同じという考え方には、
違和感がある人も多いかもしれません。

そんな人には「いいことをして念仏を唱えると極楽に行ける」という
考え方のほうがいい。

いろいろな考え方から
“しっくりくる”ものを選ぶのがいいと思います。

宗教に関しても、
機会があるごとにいろいろな話を聞いて、
心にとどめておく。

何かご縁があって、ピンと来ることがあれば、
信仰してみるのもいいかもしれません。

長い人生ですから、少し宗教と近づくのもいいのではないでしょうか。



熱心な質問に
梶田さんはひとつひとつ誠実に答えてくださいました。
法然院さんで出されているお菓子。

季節ごとに模様が替わりますが、
今回は朝顔とキキョウ。
昨今のガソリンや原料値上げの影響で、
最近一回り小さくなったのだとか。

お茶は法然院さんの湧き水
「善気水(ぜんきすい)」を使って淹れました。



サラダ隊 賀茂なす の 思ったこと


暑い中の「こころ塾」でしたが、
さすがに法然院は涼しく、
襖などを開け放てば
十分の気候だったのではないでしょうか。

年齢を重ねるごとに、
徐々に宗教に興味の湧いてきたわたし。

宗教や信心の本質に迫るような講義や質疑応答に、
改めて「きちんと宗教を考えてみよう」と思いました。

私事で供養や宗教行事に触れる機会が多かったのですが、
そのどれもを「みんながするから」と、
なんら自分の頭で考えることなくこなしてしまいました。

「先祖供養は当然のごとくするものだ」と思い込み、
なんとなくお金を払い、
目的もなく参加することには、
もしかしたら何の意味もないのかもしれません。

親戚や近所の目というものがありますから、
「では中止しよう」というわけにはいきませんが、
お寺とのお付き合いも含めて、
意味があるのかどうか
考えてみる時期なのかもしれません。
 
当日のアンケートから

心おだやかな時間が過ごせました。

素晴らしい環境の中で、心おだやかなひと時をすごしました。
ありがとうございます。
いろんな言葉に触発されました。
本日は、法然院さんの自然豊かな空気の中でよい学びをいただくことができ
ありがたく存じます。

歌の絵本らいぶも最高ー!救われました!

真章さまは、いつもさいこー!

たのしいねー!和と輪!

みんななかよくなるといいんだね。ほっとするねー!

しぜんの中で しぜんのうた。しぜんのおはなし。じねんだね。

普段ではこの様に、ゆっくりとすごせない空間の中で
大変よいお話を聞くことができました。
勉強になりました。
宗教に対する考えが少し変わった様な気がします。

私にはとてもタイムリーなお話でした。
ありがとうございます。

絵本ライブは“和のこころ”にマッチするのか疑問に感じた。

“和のこころ”とは歴史伝統の中にこそ存在すると考えますので
それにふさわしいイベントを希望します。
 

スタッフ後記

法然院さんでの「こころ塾」。

暑い中足を運んでくださった皆様、ありがとうございました。

普段は入れない本堂での講座や自然いっぱいの中でのライブなど、
会場ならではの講座になったのではないかと思っております。

今回はとくに質疑応答のコーナーが盛り上がりました。

真剣な様子や、かみ締めるほどに深い言葉の数々。

ヨコで聞かせていただいていて、大変楽しく、さらに勉強になったように思います。

次回は9月。上賀茂神社さんで「賀茂観月祭」も楽しめる企画になっています。

テーマは「月 ―月への想い―」、また足をお運びくださいね。

受付の様子。
毎回来てくださる方とは顔見知りになりました。
皆さんにお出しするお菓子用の懐紙を折っているところ。
 

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