和文化サラダは日本文化のエッセンスを
サラダボウルのようにいろいろ体験できる講座です。
季節をテーマとして、その道の先生に優しく楽しく語っていただきます。

これは和の学校ボランティアスタッフが「サラダ隊」となって
それぞれの感性で書く「和文化サラダ」レポートです。

平成18年10月〜平成19年3月 講座内容と各先生のプロフィールはこちら。

平成19年4月〜9月 講座内容と各先生のプロフィールはこちら 申込みも出来ます。

読売新聞ホームページでも掲載されました。


和文化サラダ 第7回 平成19年6月30日(土)


  夏越 〜無病息災を祈る〜
 
レポート:サラダ隊 金時にんじん  写真:吉田明彦

第1部 藤木 保誠 さん 講演


今回の会場は世界遺産にも登録されている上賀茂神社、
正式名称は賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)です。

第1部では、権禰宜の藤木さんによる夏越の祓についての説明と、
人形(ひとがた)作りを体験しました。

いつもなら、最後にあるほっこりタイムですが、
この日は夜から実際の夏越の大祓の行事に参列するため、
参加者の皆さんには、予め本日のお菓子「水無月」とお茶をお配りしました。

社務所の隣にある
「勅旨殿(ちょくしでん)」というところで
開催いたしました。
藤木保誠さん。
代々、上賀茂神社の神職のお家だそうです。
夏越の神事に参列するために
30分という短い時間でしたが
優しい語り口で、
わかりやすく楽しくお話をしてくださいました。

日本では、古来より季節ごとに身についたケガレを祓う年中行事がたくさんありますが、
6月30日の夏越の祓は上半期のケガレを祓う特に大きな行事です。

小倉百人一首の中にも、この神事を詠った藤原家隆卿の和歌があります。

      風そよぐ ならの小川の夕暮れは みそぎぞ夏のしるしなりける

境内に流れる「ならの小川」です。

この時期、神社の境内には、
「茅の輪(ちのわ)」が作られ、この輪を、左まわり、右まわり、真ん中
と3回くぐり抜けることで、心身を清めるとされています。

茅の輪は、茅萱(ちがや)という雑草から作られますが、
茅のたくましさや生命力が力をもたらすと信じられてきました。

参加者の方々には、上賀茂神社からのご好意により、
厄除の小さな茅の輪守も一つずついただきました。

茅からは心身を引き締めるような清涼な匂いがします。

人形(ひとがた)は、写真のような人の形の紙に氏名と年齢を書き、
息を吹きこめて(病気のある人はその部分をよく撫でて)、
ならの小川へと流します。

古来はこの人形が上賀茂神社の中の、
ならの小川を通って賀茂川、淀川、瀬戸内海を通り、
遠くの太平洋へと流れていくことで、ケガレが浄化されると考えられていました。

皆さんに配られたもの。
右から「おみごろも」
「茅の輪」と「人形(ひとがた)」
資料

本日のお菓子「水無月」
俵屋吉富
この季節の代表的な京都の和菓子です。
古来、宮中での暑気祓いの行事に食された
氷のかけらを模した白いういろうの上に
魔よけの意味を持つ赤いアズキがのっています。
人形(ひとがた)です。
手のひらに乗る大きさ。
ここに名前と年齢を書きます。
お話のあとは自由に質問タイム。
いろいろな質問が出ました。


第2部  夏越大祓の神事に参加!
茅の輪。
左まわり、右まわり、真ん中
と3回くぐり抜けます。
参加者も この茅の輪をくぐって
夏越の神事に参列しました。


この日の午後8時からは、
実際の夏越の大祓行事が行われました。

参加者一同も、「おみごろも」と呼ばれる、
襟を身につけて神事に参列です。

行事の始まる少し前から、川の真ん中には、
護摩木のかがり火が焚かれます。

神職の人々が雅楽と供に茅の輪をくぐって、
会場に着座され、和歌を奏上しながら
人形をならの小川に流していきます。

この行事は、約45分かけて行われ、
千年以上の昔より
京都の夏の風物詩となっています。

 水無月のなごしのはらいする人は
             千歳の命 のぶというなり

茅の輪の隣には
このような和歌が掲げられています。

夏越の祓で、心身を清め、
無病息災を祈ることで、
命が千年ものびるようになるという意味の歌です。









ここに神職や楽士の方々が座られます。
かがり火に使われるのは護摩木です。
午後8時頃になると護摩木に火がつけられます。
和の学校の席はまさに特等席。
神事の様子を拝見しました。
神職の方が橋殿(はしどの)から人形を一枚ずつ、サラサラと川に流して行きます。
ならの小川に、多くの人の無病息災を祈る思いとともに人形が流れます。
(車の形の「車形」もありました)
約45分の神事のあと、藤木さんのご挨拶があり和文化サラダは終了しました。


サラダ隊 金時にんじん の思ったこと
本日のお花:「梅雨にアジサイ」
花政
たおやかに咲くあじさいを見守るように、
夏ハゼの若枝を挿していただきました。

和文化サラダも後半に入り、
ここに来て、色々な「点」だった行事が
「線」になってつながってきました。

日本にたくさんある伝統的な年中行事は、
季節の変わり目ごとに、心身のケガレを祓い、
邪気を追い払うために
行われているのだと思います。

新年を迎えるお正月にはしめ飾りを玄関に飾り、
冬と春を分ける節分にはマメをまく。

桃の節句には
子供の健やかな成長を祝ってひな人形を飾り、
夏には夏越の大祓の行事で心身を清める。

日本の伝統行事というのは、
季節の変化を繊細に感じとり、
一つ一つにけじめをつけていく、
とても几帳面な文化なのだなぁということが、
ほんの少しかもしれませんが、
ようやく身をもって感じられるようになってきた気がします。

しかし、四季折々の自然を愛で、
家族や知人の健やかな成長や無病息災を祈る。

そんな細やかな愛情によって
育まれてきたはずの現代日本が、
失いつつあるものも
たくさんあるのではないでしょうか。

今回、特にそのことを肌で感じたのが
夏越の大祓の行事の最中でした。

古式の装束を身につけた神職の方が、
かがり火の照り生える小川に人形を流していく。

その優雅な情景の中、
カメラのフラッシュが何度も光りました
(写真撮影は禁止されていないので問題はありません)

私も途中までは、何とかこの瞬間を撮影しようと
一生懸命だったのですが、
カメラに収めようとしてアングルや
光の加減ばかりを気にしていて、
本当に夏越の大祓の行事に参加したことになるのだろうか
という疑問がふとおこったのです。

このままだと、この行事の記憶が、
「人が多くてベストショットを撮るのに苦労した」
ということが中心になってしまう。

そう思ったとき、一旦撮影することを止めて 、
この場所の今しかない空気を、
ただ五感で感じるようにしてみたのです。

幸い、和文化サラダのスタッフは役割がわかれているので、
写真撮影は別のスタッフに任せる事が出来ます。

写真を撮らなければという考えを手放したとき、
あらためてこの半年間にあった出来事を振り返り、
人形に書いた人たちの無病息災を祈る気持ちが
しみじみとわきあがって来ました。

百人一首で「みそぎぞ夏のしるしなりける」と歌われた時代は、
もちろんカメラも携帯電話もありませんから、
人々はきっと誰かにメールすることや、
どんな写真を撮ろうかなんて事を考えることなく、
目の前の季節の風景を、じっくりと味わうことが出来ていたのだと思います。

便利さを追い求めすぎて、本当のことがわからない時代になってきているという、
佐野藤右衛門さん(4月の和文化サラダの講師)の言葉も思い出しました。

日本にあるたくさんの伝統文化や年中行事にある「こころ」とは、
自身を振り返り、自分以外のものに感謝や、敬意を示すという、
実はとてもシンプルなものなのかもしれない。
と私は思っています。

現代社会において、日々の生活を全てをそういった姿勢で送ることはなかなか難しいのですが、
一年を通じて開催される「こころ塾」で学んだこと、感じたことを、
出来るだけ多くの人と共有できたらいいなぁ。

上賀茂神社に満ちていた静謐な空気に清められたからなのか、
改めてそんな初心を思い出した一日でした。

 
当日のアンケートから

京都に何年も住んでいるけれど、こういった年中行事を知ろうとする気持ちが日常でなかなか起きません。
Work shop という取り上げ方をしてもらうことで、気兼ねなく足を運べた点がとてもよかったです。
(10年近く住んでいて、ここに来たのは2回目)

日本の伝統を感じ、美しい日本語にふれて、とても有意義な時間でした。
毎回思いますが、かた苦しい話ばかりではなく、楽しいわかりやすいお話を聞けて大変よかったと思います。
ありがとうございました。

上賀茂神社の雰囲気がとても気持ちがやすらいで大好きです。
空気が外と全然違ったもののように感じますし、度々訪れたいと思います。
とてもお話にもいやされました。
(私は12月31日生まれなので、今年はぜひ晦日の大祓いにも参りたいと思います)
茅の輪を見たとき、前に注連縄を作ったことを思い出しました。
本当にいつも楽しい企画をありがとうございます。

30分のお話はあっという間でした。神社は、物心ついた時から近くにあり、なんとなく手を合わせ、そして神聖な場所という感覚はあるのですが、どういう場所と考えると何も答えられなかったのですが、今日のお話を聞いて、まだ何となくではありますが、存在意識が分かった気がします。
由緒ある夏越の大祓に参加できて、感動です!今年一番心に残るイベントになりそうです。ありがとうございます。
毎年、夏越の祓を色々な神社で茅の輪くぐり等いたしますが、今回は貴重なる神事に参加させていただき、荘厳な夏越の祓を体験でき、ありがたく存じます。
やはり夕暮れの時刻で幽玄の感を味わえました。貴重な体験です。

スタッフ後記
いつもきれいなお花を
ありがとうございます!
花政
の井上さんです。

shin-bi以外の会場での和文化サラダは
今回が3回目ですが、お天気にも恵まれ、
夏祭りの風情いっぱいの回だったと思います。

通常のお祭りのような賑やかな屋台が立ち並ぶこともなく、
しっとりとした空気が漂っていました。

和文化サラダも残すところ後3回となり、
今までのレポートや写真を見直すと、
季節の花々の美しさや和菓子の妙を再認識します。

ホームページに掲載するレポート以外の形で、
「こころ塾」をもう一度まとめ直そうという計画も、
そしてまた次の「こころ塾」をどうするかという計画も、
現在水面下にてあたふたと進行中です。

皆さんからいただくアンケートや感想は
スタッフ一同いつも参考にさせていただいております。

過去の和文化サラダの回へのご意見・ご感想でも結構です。
よろしければinfo@wanogakkou.comへお送りくださいませ。

いつもきれいなお花を活けていただいている花政さんをはじめ、
ご協力いただいている皆様、本当にありがとうございます!

 

上賀茂神社の境内にあちこち案内の看板やのぼりを出しました。
会場は勅旨殿(ちょくしでん)です。
受付の様子。
shin-biのスタッフの方々。
勅旨殿の中庭。
受付用の花::花政
クガイソウ、チンシバイ、ナデシコ、
キキョウ、コギク、ヒメユリ、
ツクシカラマツ、ホトトギス
次回は、7月5日(木)暮らす―祭から学ぶこと― 杉本 節子 先生です。

平成19年4月〜9月 講座内容と各先生のプロフィールはこちら 申込みも出来ます。


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