和文化サラダは日本文化のエッセンスを
サラダボウルのようにいろいろ体験できる講座です。
季節をテーマとして、その道の先生に優しく楽しく語っていただきます。

これは和の学校ボランティアスタッフが「サラダ隊」となって
それぞれの感性で書く「和文化サラダ」レポートです。

平成18年10月〜平成19年3月 講座内容と各先生のプロフィールはこちら。

平成19年4月〜9月 講座内容と各先生のプロフィールはこちら 申込みも出来ます。

読売新聞ホームページでも掲載されました。


和文化サラダ 第7回 平成19年4月1日(日)


   〜日本人と桜〜
 
レポート:サラダ隊 金時にんじん  写真:吉田明彦 賀茂なす


第1部 佐野藤右衛門さん 講演
この日、79歳になられた佐野さん。
「 私は今日、19歳になりました。」
還暦を過ぎたら、またふりだしに戻るので
19歳なのだそうです。

佐野さんの語り口に、会場は笑い声がいっぱい。
でも、その中には現代社会への
鋭い批判が多く含まれていました。


「佐野藤右衛門」とは16代もの間、
継承されてきた「桜守(さくらもり)」の名前です。

先々代の14代目より、滅びゆく日本の桜を憂い、日本各地の桜を調査・研究・保護活動を行っています。

第1部では、16代目佐野藤右衛門さんから、参加者へ向けてのメッセージを思いつくままお話いただきました。

前半、佐野さんから
「参加者の皆さんの中で、朝に自分でご飯を炊いている人はいますか?」
という質問がありました。

数名の方が手を挙げられましたが、
佐野さんはそれに対して

「炊いているのは人間ではなく機械です。
火加減や余熱の調整も
全て炊飯器がしていること。
そうやって機械のしていることと
自分がしている事とを混同してしまうのが、
危険な錯覚の始まりなのです」

と言葉を続けました。

現代の世界は、無機物にあふれた世界。
自然の声を聞かなくても、
人々の会話がなくなっても、
コンピューターや
家庭用電化製品のスイッチ一つで
生活出来てしまう便利な世の中です。

「いのちの営みは、植物も動物も変わらないのに、
人間だけがどんどんおかしな方向へ流れている」

と佐野さんは訴えます。

現在、気象庁が発表する
桜の開花予想の花「ソメイヨシノ」は、
人間が作った鑑賞用・園芸用の桜であり、
自分の力で子孫を残す力がありません。

成長が早く、接木だけで増えていく
この桜の繁殖力はとても弱く、
他の桜に比べて寿命も短いそうです。

明治の初めに出来たソメイヨシノの寿命が
それだけ短いということに
人間が見届けるまでには、
約100年の月日がかかりました。

自然の仕組みを知らず
目の前の華やかさだけを追い求める現代社会には「育てる」という感覚が失われています。

自然を育てる事を忘れた世の中では
子供も育ちません。

風や鳥や虫などの
自然の声を聞けない機械で計算した
桜の開花予想が当たるわけがないのです。

そして機械に支配された世の中では、
人間の気持ちの余裕がうまれません。

便利な世の中になるということは
一見幸せなようで実はとても恐ろしいことなのです。

花見の季節にだけ
桜を愛でている人が多い世の中ですが、
ヤマザクラのような野生の桜の樹を見ていると、
花が咲き、めしべが蜜を出し、
おしべの花粉がついて実を残す。

そこに、小鳥や虫や風や色々な
自然の手助けがある。

花の盛りの季節の間だけではなく、
そういった自然の相互共存の営みを見なくては、
自分が今生きている世界の全体の姿がわからないのです。

少し前に「女性は産む機械」という発言をして社会問題になった大臣がいましたが、
実際の「実」を残すか残さないかは結果でしかなく 、
女性にいのちを宿す機能があり、
産む「性」であることは、
太古の昔より変わらない自然の仕組みなのだから、
この発言のこの特定の部分だけを責めたてる世の中は、目の前の現象だけを見て、
自然の営みを否定するおかしな世界だ。
と佐野さんは言います。

「今年はまさに、西行法師の『ねがわくば・・・』の年になります」

今回、佐野さんは何度かこの和歌を口にされました。

  願わくば 花のもとにて 春死なむ このきさらぎの 望月のころ     西行法師

望月とは、すなわち満月、今年の4月の満月は今回の和文化サラダの2日後、4月3日でした。

そして、それはちょうど旧暦の如月(2月)の16日にあたり、西行法師の亡くなった日と一緒なのです。

佐野さんの自然界を見つめる眼は常に旧暦に基づいています。

毎年のように言われる暖冬や猛暑という現象も
実は旧暦の閏月
(太陽暦に比べて短い太陰暦と実際の暦がずれるのを防ぐため、挿入される13番目の月のこと)
に基づいているだけのことで、
夏が多い月や冬が短い月があるのは、別におかしな事ではない。

空調の効いたコンクリートの部屋の中で、
よその国で作られた暦を基にして、
日本本来の自然の姿を知らずに
毎年のように今年は異常気象だと騒いでいる人間の方が
自分勝手で異常な姿なのです。

全国の桜と向き合う佐野さんのお話は、
桜という花が日本文化の中に根付くまで、
日本がまだ中国大陸にくっついていた頃の、
地球の二億年以上の歴史をも視野にいれて語られます。

日本には、幸いなことに美しい四季があり、
日本文化は稲作文化と神道・仏教が混じりあって形成されてきました。

水田を保つには常に良い水が必要となるため、
古来より日本人は自然や水に対して
非常に繊細な感覚を持っていたのです。

今、水のいらない畑から取れる「麦の文化」が水田を減らし、
高層ビルが空気の流れを変え、
中国大陸から吹いてくる黄砂に含まれる酸は桜の花に穴を開け、
長い年月をかけて日本人の心と身体を育ててきた生態系は
足元から崩れようとしています。

そのような現代社会に対する様々な警告を伝えつつも、
日本各地にいまだ残る名桜の事を語る佐野さんの言葉は生涯現役の桜守です。

全国の桜をあれこれと紹介しつつも、
「面白い桜があったらすぐに電話ください。飛んで行きます」との事。

1年の内、たった5日ほどしか咲かない花の為に360日を費やす桜守、
佐野藤右衛門さんの言葉は力強い説得力にあふれています。



第2部 桜の花を分解してみよう!
佐野さんが持ってきてくださった桜。
この花を切って
参加者の皆さんに配りました。

第2部では、「いのちの営み」を自分の目で確かめてみよう。ということで、
講師の佐野さんが持って来られた
ヤマザクラとヒガンザクラを、実際に分解してみました。

まず、枝から花を摘んで黒い紙の上に花をとんとんと押し付けます。
すると白い粉がはらはらと落ちました。

これが桜の「花粉」。

そして、花びらを一枚ずつ、取り外し、
めしべとおしべのある花の中心部をカッターナイフで2つに切ります。

めしべの下には、
子房(しぼう)と言われる種を育てる場所があります。

「雌には、命を育む場所があります。 これは植物も人間も一緒です」

「花にはおしべが曲がっているものも、めしべが曲がっているものも色々あります。これも人間と一緒です」

この第2部で使った2つの桜は、 ソメイヨシノに比べて、強靭で樹齢も長く、
数百年生きるものもあるそうです。

しかしそういった桜はたまたま生き残っただけであり、
種をつけるかつけないかという事よりも
「生き残っている」事の方が重要であると佐野さんは主張します。

めしべの先をルーペでよく見ると、めしべの先からはうっすらと甘い蜜が出ています。

これが虫や小鳥を誘って、受粉を手助けするようです。

また、めしべの周りをおしべがぐるっと囲んでいるように
「男は女を守らなければいけません」と佐野さんは言っておられました。

昭和三年生まれで、戦争体験のある佐野さんの言葉はここでも重く響きます。

散り際の華やかな桜の花は、昔は、武士の生き様や、特攻隊の「潔い死」の象徴ともなっていました。

前半に会話が無くても成立してしまうと言われた現代社会ですが、
このひと時は参加者一同、隣の人とのルーペの貸し借りや、
花びらの分け方など、自然に会話が発生したようです。

桜には精気と妖気が宿っています。とも教えられたこの回ですが、
この時間はもしかしたら、桜の精気が会場全体を覆っていたのかもしれません。

参加者も手伝って桜の花を切ります。
黒い紙の上に桜を置きます。
花びらをとって、並べます。
中心をカッターで縦に切ります。
皆さんに配ったのは
・黒い紙・カッターナイフ・竹串
これで桜の分解ができます。
理科の実験のような作業に
皆さん真剣そのもの!
佐野さんは、ひとりひとりの机をまわって
質問を受けたり、丁寧に説明をされていました。
   

ほっこりタイムの本日のお菓子
(春の花々をイメージして選んだ式亭の京菓子)
・幽霊飴(みなとや幽霊子育て飴本舗)
・金平糖(緑寿庵清水)
 抹茶、しそ、梅と3種類の味があります。
・氷菓糖(俵屋吉富)
 

サラダ隊 金時にんじん の思ったこと
本日のお花:花政
本番用:ツバキ(ワビスケモリノシタ)

毎回、華麗な花を飾っていただく花政さんですが、
今回の主役は写真のように、
講師の佐野さん自ら持参いただいた枝つきの桜!
ということで、まだ開ききる前のツバキを一輪、
信楽焼の器に生けていただきました。
このような奥ゆかしさが、
桜と椿、それぞれの花の美しさを
より一層引き立たせているのではないでしょうか。

「かなわないなぁ!!」

レポーターとしての感想を書くべきこのコーナーですが、今回は本当にこれ以外の言葉が出てきませんでした。

「男が女を守るべき」だとか
「女には子供を育む機能がある」
という発言がセクハラだ男女差別だと
言われるようになって、本当の事が言えない時代になってきた。
と佐野さんは言われていました。

実際ここには書いていないような過激な発言も
ほんの少しだけあったのですが、
自分の目と耳と足で体得した経験を持っている人の言葉は、かえって自分が本当に何も知らないのだなぁという事実を突きつけられます。

学校の授業で学んだことや、
本で読んだことは、結局「体験」にはかなわない。

佐野さんの言葉は聞く人をそんな気持ちにさせると思います。

自然の仕組みがわかると、
新月や満月にそって体調が変化することにも気付き、
心も身体も楽になっていくそうです。

最後の
「佐野さんの一番好きな桜は何ですか?」
という質問に
「私は女性はみんな好きです」
と答えた佐野さんの
桜に対する深い愛情と小粋さに、
何度も笑い声がおこったとても楽しい回でした。

第1部、第2部と
書き止めた印象的な言葉は数が尽きないのですが、
ここでは、その中の一つをご紹介したいと思います。

「最近は自分より年上の人が少なくなって、
先人の知恵を教えてもらえなくなったのがとてもつまらない。
自分の無い知恵を若い人に与えていくばかりで、
今の僕の頭は空っぽです」

ここで、私は「万有引力の法則」の発見者、アイザック・ニュートンの言葉を思い出すのです。

「I do not know what I may appear to the world; but to myself I seem to have been only like a boy playing on the seashore, and diverting myself in now and then finding a smoother pebble or a prettier shell than ordinary,
whilst the great ocean of truth lay all undiscovered before me.」

(私が世界にどう写っているかわからないが、自分自身では浜辺で遊んでいるただの子供のように思える。
浜辺で、まんまるな石や、きれいな貝殻を探すのにずっと夢中になっている間にも、
私の目の前にある大海には、まだ見ぬ真実がずっと眠ったままなのだ)

日本文化と欧米文化では、
桜や自然に対する考え方は、あきらかに違うと言われていた佐野さんですが、
どれだけ、体験しても人間の一生で学べることはわずかでしかなく、
自然の営みの中には、多くの教えが残っている。

真実を追求する人にしか辿りつけない万国共通の境地というのは、
やはりあるのではないかと私は思っています。

 
当日のアンケートから

とても楽しく、勉強になりました。
特にお話をうかがって、旧暦で生活すると自然をもっと身近に感じながら生活できそうで、
旧暦のカレンダーを買おうと思っています。
花を分解したのははじめてでした。
桜を見に行くのは好きでよく見に行っていましたが、
花をこんなにじっくり観察したのははじめてでまた違った楽しみ方を教えていただきました。

本当に楽しい語り口で、くだけた口ぶりでわかりやすく話してくださって、
すてきなひとときでした。
これから先のお話が楽しみです。
自然にさからわず、自然に合わせて。大事なことですね。

貴重はお話を有難うございました。
自然と人間との共生・共存の大切さを多くの人々に知って頂きたいと思いました。

「桜の花は一年の結果」という言葉が印象的でした。
桜と自然、人間全てにおいて通じるものがあり、
人間だけがその摂理に従わず勝手が過ぎてるように感じました。
毎日の生活の中で大切に思うことが難しくても
せめて桜の花が咲く、年に一度くらいは桜を通じて自然といのちなどについて考える日でありたいです。

スタッフ後記

これが参加者に配られた資料です。
今回の資料は、「櫻〜佐野藤右衛門さくらコレクションの世界」

佐野家が代々見つめて来た数々の桜のほか、
浮世絵や着物や道具の文様に使われた桜の写真がたくさん載ってます。

50部限定のこの資料は、
参加者の皆様にも貴重なお土産になったのではないかと思います。

「和文化サラダ」も今回より後半に入りましたが、
色々な講師の方のお話の中で「旧暦」がキーワードと
なっているように感じています。

昔ながらの日本の生活の知恵や情緒は、
多くが旧暦に基づいて育まれたものですよね。

9月の和文化サラダ「暦―旧暦を暮らそう―」の回でも、
レポーターをつとめさせていただく予定の金時にんじんとしては
今から、楽しみで仕方がありません。

回を重ねる度に、少しずつ要領も良くなっていくはずのスタッフですが、
参加者の皆様が増えてきたおかげで、
楽屋裏のどたばたも一層パワーアップしております。

ご参加いただいている皆様、ご協力いただいている方々、
いつも本当にありがとうございます!
この日も花は、花政のご主人、藤田修作さんが
自ら生けてくださいました。
ちょっぴり遅刻して来られたので
みんなで生けられる様子を拝見できました。
毎回、受付や会場の準備をしてくださる
shin-biの方々。

まだこのときは受付用のお花が届いていません。
受付用の花::花政
季節の花をまとめた愛らしい花かご。
ミヤコワスレ、ヤマブキ、
クロユリ、コデマリ、イセナデシコ
   

 

次回は、6月30日(土) 「夏越 〜無病息災を祈る〜」 藤木保誠先生 です。

※5月15日の「着物」は
講師の市田ひろみ先生がお怪我をされたため
残念ながら中止になりました。

平成19年4月〜9月 講座内容と各先生のプロフィールはこちら 申込みも出来ます。


日本文化そもそも レポート

和文化サラダ レポート

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