和文化サラダは日本文化のエッセンスを
サラダボウルのようにいろいろ体験できる講座です。
季節をテーマとして、その道の先生に優しく楽しく語っていただきます。

これは和の学校ボランティアスタッフが「サラダ隊」となって
それぞれの感性で書く「和文化サラダ」レポートです。

和文化サラダの全講座内容と各先生のプロフィールはこちら。申し込みもできます。

読売新聞ホームページでも掲載されました。

 

和文化サラダ 第4回 平成19年1月20日(土)

   〜節分の謎、お見せします〜
 
レポート:サラダ隊 金時にんじん

写真:松尾宇人


今回の和文化サラダは、初めて「shin-bi」さん以外の会場での開催となりました。

京都の表鬼門(北東の方角、陰陽道では鬼が出入りする方角とされています)を守護する吉田神社。
会場の外からは、時々お祓い行事の太鼓の音が聞こえていました。

今回の講師は吉田神社の禰宜、高野朝美さん。

過去にNHKのラジオ放送で「日本で一番忠実に(節分行事を)再現している」と
言われたこともある吉田神社の節分祭の話や、
実際の写真を元に、日本の神道の考えとはどういうものか、鬼とは何か、
といった幅広いテーマでお話していただきました。

第1部 高野朝美先生 講演
神楽岡町追儺保存会会長の藤村素弘さん。
追儺式の流れを説明してくださっています。

鬼の面。それぞれ表情が異なります。
追儺保存会ではこの他にも
いくつか鬼の面を持っておられます。

「節分」とは、
「季節」を「分ける」ことを意味しています。

本来は、春夏秋冬の
各季節の境目を指していましたが、
今日では、立春の前日、冬と春を分ける時期に
行われる行事として定着しました。

日本では、一月を
「睦月(むつき)」とも呼んでいます。

今では太陽暦の新暦の
一月のことを言っていますが、
元々は旧暦の一月 (現在の一月下旬〜三月上旬頃)の名前だそうです。

この時期は、冬から春へと
季節が変る時期にあたり、
陰と陽が「交わる(睦みあう)」ことで
邪気が発生すると考えられてきました。

その邪気をはらうために始まったのが、
追儺式(ついなしき)、
いわゆる鬼やらいの行事です。

儀式の起源は中国の周の時代とも言われ、
方相氏と言われる
黄金の四つ目の持った役人が
疫鬼を追い払う行事だったものが、
時代と共に少しずつ変化して
現在のような形になりました。

本来「鬼」というのは
疫病や 悪い病気の象徴であり、
具体的な形では登場しなかったのですが、
行事が繰返される中で、
追いはらわれる役割の者を
目に見えるわかりやすい形で登場させようとしたのが、今日の鬼の姿だそうです。

鬼は、鬼門と言われる
北東(うしとら)の方角からやってくるため、
牛の角と虎の皮で出来たパンツを着ています。

「日本文化は裏切りの文化です。
裏切りというのは悪い意味ではありません。
鬼にとどめをさすのではなく、
お祓いして本来の場所へ帰っていただく。
というのが、本来の節分行事の主旨です。

鬼は時には、鬼神といって神にもなるし、
人間もまた鬼になることもある。

陰と陽が共存しているのが、
世界のありようであって、
善悪の二元論で語ったり、
これが正解というように
白黒をはっきりさせないのが
日本の神道の考え方です。」

今回のお話の間、高野さんは、何度も
「これが正解というものはありません。色々な解釈や、方法があって当然なのです」
という事を強調されていました。

現在の吉田神社では、
地元の神楽岡(かぐらおか)町の追儺保存会によって行われる
「追儺式(ついなしき)」のほか、
「火炉祭」(かろさい―古いお札やしめ縄を燃やす行事)、
「節分後日祭」を中心に、三日間にわたる節分大祭を行っています。

第一部では、この節分大祭のメイン行事である「追儺式」の様子を実際の写真を用いて、
紙芝居風に紹介しました。

神楽岡町の追儺式保存会会長である藤村さんにも
実際に儀式で使用されている衣装のご提供の他、
この紙芝居の解説にご協力いただきました。

追儺式の主な登場人物は以下の通りです。

方相氏(ほうそうし)





鬼を追い払う役。四方に目を配るため四つの黄金の目を持つ。
上卿(しょうけい)

勅使役。吉田神社では毎年還暦を迎えた京都の著名人が務める。
※平成19年は、狂言師の茂山七五三氏が務められます。
しん子(しんし)・舎人(とねり)
※しんの字は振の左がニンベン


方相氏のお供の童子。写真はしん子
奉行、陰陽師(おんみょうじ)、齊郎(さいろう)

吉田神社の神職が担当し、大祓の詞を奏上する。

殿上人(てんじょうびと)

上卿のお供役。

衛府官人(えふかんにん) 上卿の護衛役。

儀式は、約20分間かけて行われます。

斎場には、儀式を司る奉行、陰陽師、齊郎が着座されています。

そこへほら貝の音色と共に行列となって、
上卿と、殿上人と衛府官人、続いて方相氏と?子、舎人が現れます。

陰陽師が大祓の詞(ことば)を奏上した後、
斎場の四方を祓い清め、神前に小豆やお餅など、力を与えるとされる食べ物をお供えします。

そしてまた祝詞を唱え、国の平和と人々の平和を祈願しているところへ
赤青黄の三色の鬼が斎場の周りを暴れ、まわりの子供たちを
脅しながらやって来ます。

方相氏は、盾と矛を打ち合わせながら、鬼を追い詰め、鬼の力を弱めていきます。
鬼が退散した後は上卿と殿上人が鬼やらいの矢を三度放って儀式が終了となります。


誠実にお話をしてくださる高野さん。
いつも参詣される方にも丁寧に接しておられる
その人柄がわかるお話でした。
写真を使って
追儺式の流れを見ていただきました。
吉田神社秘蔵の古代中国の鬼の面。石でできています。
 

第2部 吉田神社を散策しよう!


後半は、実際に吉田神社の境内を高野さんに案内していただきました。

普段は入れない大元宮(だいげんぐう)には、
日本の八百万の神々が祀られています。その厳かな雰囲気に、礼や拍手を打って
お参りする参加者の方もおられました。

大人数の移動中なので、お賽銭を投げたり、礼や拍手もごく簡単なものしかできませんでしたが、
作法が正しいかといったことは問題ではなく、
敬う「こころ」が大切なのだという事を、お話しいただいた直後だったので、
その場に漂う静粛な空気を参加者それぞれの想いで味わいました。

冬の寒さも手伝って、身も心も引きしまるような時間でした。
散策している間に、中の会場では、
ボランティアスタッフがお茶と節分の福豆を用意していてくれました。

寒い外から帰って来た後は、あったかいお茶でほっこり。
そして、「魔(マ)を滅(メ)する」「息災」「邪気を祓う霊力がある」等々
様々な解釈がされている福豆をいただきながらの質問タイム、まとめの時間となって終了です。

火炉。1月19日に完成したばかり。
お正月の注連飾りなどをここに入れて
2月3日の夜11時に燃やします。
高野さんにお話いただきながら
大玄宮に向かいます。
途中にもいろいろと神社があるので
説明を聞きながら歩きます。
大玄宮に到着しました。
ここは節分祭と毎月1日だけ開放されるところ。
この日は特別に拝観させていただきました。

鳥居の前にある八角形の形のところに
節分祭のときには「厄塚」ができ
それをに触って厄を落とします。
この隣にある笹。
これも神様の「よりしろ」になるものです。
大玄宮の廻りは、全国の神様が祀られています。
境内の片隅に木彫りの方相氏が。

寒い境内を歩いて戻ると
スタッフが淹れてくれたあたたかいお番茶と
福豆が待っていました。
(この福豆は節分祭で
くじ引き付きで販売されているものです)
ほっこりタイムは
自由に意見を言ったり質問したり出来る場です。
「豆のまき方の正しい作法は?」の質問をしているところ。

サラダ隊 金時にんじん の 思ったこと

今回は、神道という日本の宗教の哲学的な考え方を 参加者に問いかける回だったと思います。

仏教は「慈悲」、キリスト教は「愛」を尊んできましたが、
日本の神道で尊ばれてきたのは、「敬う」ことだという高野さんの言葉がとても印象的でした。

自然や、祖先や、陰や陽も全てを「敬う」からこそ、鬼にはとどめをささず、退散してもらうのですね。

また、将棋の駒でも、取った相手の駒を自分の持ち駒として使うように、
ごく身近なところでも、陰と陽の立場が交代する例を紹介していただき、これまた納得でした。

鬼の正体については、私は「人間のこころの一面」なのだと感じています。

一番最後の質問タイムで、参加者の方がこのような内容の質問をされていました。
「豆まきの作法で、下手投げにするというのを教わったことがあります。
でも、それはソフトボールのような投げ方じゃなくて、
豆の入った升を胸のあたりへ持ち、
その位置から下手投げに豆をまく。という作法でした。
私は、それを自分のこころの邪気を追い払うためなのかな。
と思ったのですが、どうでしょうか」

高野さんの回答はYESでもNOでもないのです。
「どの方法が正しいかではなく、どう解釈するのが自分にとって必要なのかを考えることが重要です」
というものでした。

だからここでは私の解釈を書かせてもらいました。
牛(草食動物)の角と、虎(肉食動物)の皮のパンツを着ている鬼、
生き物の中で、草食と肉食をどちらも行うのは、人間だけ。
(犬や猫も雑食ができますが、基本的には肉食だと思います)

ホラ!やっぱり鬼は人間の別の姿なんだ!
そういう邪(よこしま)な心が自分にあるのを認めた上で、
それを「消す」のではなく「鎮める」、
こういった神道の「やさしさ」と色んなものに
「感謝するこころ」をたくさん感じることの出来た回だったと思います。

「鬼」の解釈については、素人の私の考え以外にもたくさんあって、
和文化サラダの時間内では、とても語りきれないそうです。

でも正解を追い求めない姿「優柔不断」とは、
優しくて、柔らかい気持ちが不断(絶えないこと)という意味なのかもしれません。
実はほめ言葉になってもいいんじゃないかな。
なんてことも考えた回でした。

いつもご協力いただいている花政さんの他、
追儺式の衣装展示にご協力いただいた、黒田装束店さん、オフィス京都さん、
神楽岡町追儺保存会の藤村さん。本当にありがとうございました!!
 
当日のアンケートから
おもしろかったです。方相氏のお面とか衣装とか近くでみれておもしろかったし、
大元宮が八角形なのも節分に来た時は暗くて気づかなかったので、おもしろいなと思いました。
神道って宇宙とも関係あるの?と思いました。ありがとうございました。
子供の頃から何気なくしていた節分の行事。
節分以外の行事でもそうですが、何気なくやっていて、いざ結婚して、実家を離れると、
意味は分からないけど、やらないと気持ちが悪いというものがあります。
今日は鬼門が東北の位置であり、それが丑寅の位置ということから
二本の角にトラのパンツというのに「おーっ」と感心しました。
いつも興味深いお話をありがとうございます。
今回で4回目の受講ですが、日本の行事もやはり季節とともにあるんだなぁと思いました。
昔ながらの行事を形だけでも難しいのに、
その心とともに後世へ伝えて行くのがどれだけ大変か・・・
少しだけでも垣間見れて、日本人として生まれてきた私たちができることを探していきたいと思いました。
節分が好きで参加しました。
家庭で行う豆まきは宗教を信仰していなくても願いをとなえることができる、
行いを正す、環境をととのえることができる、そういう機会だと思っています。
今回のお話も、そういう話だったように受けとめています。
神道の説明は正直難しいと思うところもありました。
ただ、話を聞いていくうちに「自然に対して謙虚な心を大切にする」「善悪二極説ではない」などの
神道の考えにとても共感しました。
和の文化を紹介し、それを掘り下げることで、得られるものは大きいと思います。
節分の意味も知らなかったのですが、参加して参考になりました。ありがとうございました。

スタッフ後記


吉田神社の隣にある建物といえばなんでしょうか。
そう!京都大学です。おりしも、今回は大学入試センター試験の初日と同じ日でした。

マークシートに必死になっている受験生がたくさんいたであろう京大の隣では、
「勝ち組」「負け組」なんて言葉が流行っている現代だけれども、
日本古来の思想というのは、そういう白黒をはっきりつけなくていいんだよ。
なんて全く別の考えが話されていたのですね。
これこそ混沌の思想、神道の姿なのでしょうか。

ン年前の1月、京都大学でインフルエンザの高熱の中、
必死にセンター試験を受けた思い出のある私としては、
そういう意味でも時間の流れを感じる回でありました。

今回は、写真のように展示物も豪華です。
実際に追儺式で使用されている鬼の面や衣装のほか、最近吉田神社に寄贈された、
中国古代ものと思われる石の鬼面などなど、
たくさんの方がカメラで撮影をされていました。鬼のこん棒だけ。お面だけ。花だけ。
色々なアングルで皆さん思い思いの写真を撮られていましたね。

素敵な写真が撮れた方は、ぜひ、和の学校の「季節のたより」へも投稿してくださいませ〜。

「立春」を感じさせる緑豊かに彩られたお花たちです。
花政

白梅、ロウ梅、水仙、紅わびすけ、雪柳、椿の照り葉、和花の中に一つだけ洋花エビデンドラムが混ざっています。
こちらは受付に生けてくださった花。
花政

白玉ツバキ、曙ツバキ
いつもきれいなお花を持ってきてくださる花政さん。
春を感じる花々を本当にありがとうごいました。
衣装の陳列と片付けをお手伝いくださった
黒田装束店さん。ありがとうございました。

 

次回は、2月10日(土) 「雛 〜ひなまつりの世界〜」 田中正流先生 です。

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