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《「にほんのこころ」は平成14年から15年にかけて取材させていただきました 》

抹茶とは―
奈良時代に中国から伝わった「茶」は、今でも私たちの日常的な飲み物として親しまれています。その中でも「抹茶」は、唯一、葉全体を粉末にしてその栄養素をすべて取り込めるもの。その抹茶にこだわり続け、全国茶品評会で4年連続1位に輝く「丸久小山園」を訪ねます。
茶の歴史
わが国に初めて茶が伝えられたのが、古い記録では奈良時代には「行茶の儀」がすでに行われていたと記され、それが茶の始まりだと言われています。

平安時代の初め、伝教大師最澄や弘法大師空海などが中国(唐)から茶を持ち帰りその喫茶法を伝えました。
このようにわが国の茶は、中国の茶そのままの姿で徐々に多くの人に親しまれ、その頃から茶樹の栽培は始まっていたということです。
栄西禅師
喫茶養生記

宋に2度にわたって禅宗を学び、日本に臨済宗を伝えた鎌倉時代の僧 栄西禅師が当時中国で行われていた碾茶(てんちゃ)の製法とその喫茶法を日本に伝えました。

また「喫茶養生記」を著し、茶の効能を述べ、 茶を飲むことを広く伝えました。

 
鎌倉時代に栄西禅師が著した、茶の効能等が書かれた本です。
効能の他、形、採る時期や採り方、加工方法なども書かれています。

「茶は養生の仙薬なり。延齢の妙術なり。」
とあります。
 
   
宇治
茶道

栂尾(とがのお)茶の栽培を始めた明恵上人(みょうえしょうにん)は、やがて茶の生育に適した風土を求めて、川霧の深い宇治を選びました。

京都の南、宇治川が流れる宇治は、温暖で多湿な土地柄で茶の栽培には適しています。

天与の条件に恵まれた宇治の名声はやがて世に広まっていき、足利義満は「宇治六園」を諸将に聞かせ、宇治茶が大いに発展したのです。

また豊臣秀吉は宇治の製茶家の発展をたすけ、徳川将軍家は毎年欠かさず「御茶壺道中」を行い、宇治茶を江戸まで運ばせました。

こうして宇治は天下一の茶どころとして知られるようになりました。

現在では宇治田原(うじだわら)や和束(わづか)など、宇治よりさらに南に位置する地域がもっとも盛んに茶の栽培が行われています。
(写真は煎茶の茶畑です)

 

室町時代に始まった殿中や書院の茶の湯は、村田珠光、武野紹鴎などによって世に広まりました。やがて千利休が、禅の心と侘びのたたずまいを取り入れ「茶の湯」を大成します。

その頃宇治で工夫された茶畑の覆いの下で育った抹茶は、茶道の大成とともに全国の茶人に使われるようになりました。

「茶の湯とはただ湯をわかし茶を点(た)てて のむばかりなることと知るべし」

安土桃山時代に千利休が大成した茶の湯。 それが現代の茶道に受け継がれているのです。

 
 
丸久小山園の歴史
 
創業
自園茶
元禄年間、茶に適しているとされる宇治の里で小山久次郎が茶の栽培と製造を手がけたのが始まりです。以来代々宇治茶を家業とし、四代後には販売も手がけるようになりました。
 
契約農家からも茶を買っていますが、自家農園の茶畑でも、丁寧に茶作りをしています。

覆下園(おおいしたえん)といわれる直射日光を遮(さえぎ)る茶園では、葉は日光を求めて大きくやわらかく育ちます。また、茶葉にうま味とやわらか味、そして美しい緑色が宿ります。
 
   
全国茶品評会
審査技術

栽培から製造まで一貫して作られた自園茶は、毎年茶作りを競う全国茶品評会に出品され幾度も大臣賞に選ばれました。

さらに平成11年度から4年連続で第1位を受賞しています。このことは、より良いものを提供したいという姿勢でもあり、品質向上に大きく寄与しています。

 
茶品種鑑別、生産茶期別判定、生産地判定、生産地鑑別などの技術を競う「全国茶審査技術協議大会」で、現当主の小山元治さんは過去2回の優勝を経験し、しかも1回は史上初めての満点優勝を果たしました。
 
お茶の種類
茶の種類
お茶は栽培方法や製造方法でその名前が変わります。 ですから、抹茶や玉露、煎茶、また紅茶や烏龍茶も、同じ葉から作ることが可能です。 ただ、それぞれの茶に適した栽培品種があり、その栽培方法と製造方法で、それぞれに美味しいお茶が出来るのです。

日本のお茶は主に「不醗酵茶」に属します。「醗酵茶」の代表が紅茶で、「半醗酵茶」の代表が烏龍茶です。
 

 
日本のお茶は大きく二種類に分けられます。 栽培のときに茶園に「覆(おお)いをしたお茶」と「していないお茶」です。
覆いをするものー碾茶(てんちゃ)・玉露(ぎょくろ)・かぶせ茶
 
覆いをしないものー煎茶、川柳、ほうじ茶、番茶(地方によって番茶の定義は異なります)
 
碾茶(てんちゃ)
玉露(ぎょくろ)
抹茶の原料となる葉を「碾茶(てんちゃ)」と言います。

摘み取り前の茶園に1ヶ月くらい覆(おお)いをして 95%程度遮光した中で栽培し、丁寧に手で 摘み取ります。

抹茶は一番茶だけを使います。

葉は蒸し上げて、揉まずに乾燥し、この状態になったものを碾茶といい、茎や葉脈を取り、柔らかい葉肉だけにします。

これを石臼で細かくひくと、抹茶になります。
 
摘み取り前の茶園に1ヶ月くらい覆いをして95%程度遮光した中で栽培します。

碾茶と同様に栽培され、摘み取ります。
玉露も一番茶だけを使います。

摘み取った後、 蒸します。ここから碾茶とは違い、揉みながら乾燥します。柔らかい葉なので丁寧にやさしく揉みます。

うまみの素となるアミノ酸が多く含まれ、まろやかな味わいです。
 
 
煎茶(せんちゃ)
茶園は覆わず直射日光の下で栽培されます。

5月の八十八夜頃から一番茶が摘まれ、6月頃に二番茶8月頃に三番茶が摘まれますが、煎茶として 売られるのは二番茶までです。

さわやかな味、香り、ほどよい甘さと渋みがあり、細く固いヨリのと ものが上質とされます。
 
その他にも「茎茶」「かぶせ茶」「番茶」「川柳」「ほうじ茶」「玄米茶」「芽茶」「粉茶」などがあります。
 
抹茶作りの工程  
抹茶用の茶は、太陽の強い光を避けるため「よしず」や「藁(わら)」で覆った「覆下園(おおいしたえん)」で栽培します。
 
茶園づくり
4月に入ると、碾茶園に覆いをかけるための棚を組みます。4月下旬には、よしずを茶園の上に広げて、約10日間ほど日光を緩やかに遮り、よしずを広げてから約10日間後、日光を遮るため、その上に藁(わら)を均等に広げます。
 
 
茶摘
覆下園で葉が大きく、やわらかく育ち、 5月中旬から茶摘が始まります。

天候や茶葉の生育のスピードをしっかりと見極め、最も条件が良い1日を選んで、1枚1枚丁寧に摘み取られます。

この摘み取る日を見極めるのが大変難しいとされています。
 
摘み取られた茶葉は、すぐにそのまま蒸し器に入れられます。
 
   
蒸し

 

 

 

 
そして強烈な蒸気で蒸されます。これは日本のお茶独特のもので、葉の中のビタミンCなどを分離する酸化酵素の作用、つまり醗酵を止める働きをします。この工程は製品の良し悪しを決める重要な役割です。
蒸しの途中でも小山さんは丁寧に、蒸し加減をチェックします。
   
乾燥

 

 

 

 

蒸された生葉は散茶機で、蒸し露を取り除きながら均等に散らされます。

 
   

そしてそのまま乾燥炉の中で乾燥され、碾茶の荒茶と呼ばれる状態になります。

 
   
練(ね)り
 
 
最高級品は「練り」という工程に再び入ります。棚乾燥という柿渋を貼った箱にお茶を並べてゆっくりと乾燥させます。これにより、さらに茶の葉の鮮やかな色と香りを封じ込めることができます。その際、一棚一棚、太い軸や悪い葉などを手で取り除きます。
 
 
保存

練りを終えた茶は「荒碾茶」と呼ばれ、茶箱に密封された後、低温で大切に貯蔵され静かに熟成のときを待ちます。
そして必要量だけを少しずつ出庫して精選加工にまわします。

ここまでの工程を、茶摘から一気に行います。

 
   
精撰
 
 
蔵出しした荒茶は均一の大きさに切断し、「唐箕(とうみ)」で風を利用して茎や葉脈を取り除きます。
乾燥された茶葉は静電気を帯びますのでこれを利用して、高圧の電気選別機で混入した古葉やわらを取り除きます。

さらに高級品は色別選別機によって色の劣る葉を取り除きます。

小山園での抹茶づくりで使われる機械はすべてオリジナル。その元になるのは職人の技です。
 
 
 
今でも最上級の碾茶は、人の手で一葉ずつ箸でより分けられ、昔と変わらない方法で職人の手により精撰されます。
箕(み)と竹通しを使い、柔らかい葉とそれ以外のはを選り分けます。
右の写真は「箕(み)」を振って、葉をよりわけているところ。この技術は大変な熟練を要します。
   
審査
 
 

品種が同じでも、畑や農家、天候で茶の出来具合が違うので、色・味・香りを茶畑ごとに審査して評価をする必要があります。

丸久小山園では特にこの工程を重視しているため「審査室」があります。
この部屋は直射日光が入らず、また午前と午後で同じ色に見えるように 北向きで、まわりは黒一色につくられています。ここで、それぞれの茶の色、味、香りを見極めるのです。丸久小山園ではこの仕事を代々の当主がすることになっています。
多いときには100もの審査をしなければなりません。

   

葉の色も自然光の中で何度も確かめます。

 

代々受け継がれた、味覚と嗅覚でその味と香りを確かめます。

 
   
合組み(ごうぐみ)

合組みはブレンドのことです。色・味・香りの良いお茶を作るために審査の評価をもとにブレンドします。ここで代々の伝統的な味と香りが受け継がれ、オリジナルの味になるのです。

 
   
石臼(いしうす)で碾(ひ)く

小山園に伝わる石臼です。昔は碾茶を茶壷に入れて、飲む人が飲むときに自分で石臼をひいていました。昔は各家にこのような石臼があったのです。

 
しかし最近は石臼が家庭から無くなったため、石臼でひいたものを販売しています。じっくり時間をかけてきめ細かくひき上げていきます。ひとつの石臼で一日にたった40gしかひけません。出来上がった抹茶は生葉の約十分の一の重さになっています。
 
思い
広める
お茶を飲む人が少なくなり、抹茶の美味しさを知らない人も増えてきました。 「抹茶入りの菓子はいろいろあるが、抹茶の美味しさが伝わる菓子はない。何より本当の抹茶の美味しさを若い人にも知って欲しい」という思いから様々な抹茶入りの菓子を作っています。それが伝統を守る姿勢でもあるのです。
 
抹茶サクレット
 
抹茶ロール
 
水晶茶飴
 
 
   
5ミクロン
 
 
熟練の職人が、石臼のこの細い溝を彫ります。円周部15ミリほどは溝を切っていません。
何千年もの歴史がある石臼の構造までも専門家と取り組みながら見直し、さらにもっと美味しい抹茶づくりをしていきたいと小山さんは言います。
現代の技術と受け継がれた伝統を調和させて5ミクロンの美味しさを追求しています。
   
 
 
 
信頼

自家農園で茶を育てることで、製造する技や味・色・香りを感じる五感を研澄ませ続けることにつながります。 それが、これからも消費者や他の契約農家の信頼を得るとになるのです。
これが代々続けられてきた丸久小山園の姿勢です。
「伝統のある、このお茶を守っていきたい。いろいろな方に味わっていただきたい。それを広めていくのが我々の役目だと思っています。」

丸久小山園
〒611-0042 京都府宇治市小倉町寺内86
TEL 0774-21-3151 FAX 0774-28-2288
http://www.marukyu-koyamaen.co.jp/

 
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